「風立ちぬ」と煙草と「パンナム」と「マッドメン」

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「風立ちぬ」の喫煙描画の是非が話題となっていますね。
「現代の倫理観では好ましくないが、当時は当たり前に行われていた」事を物語のなかで描くべきかどうかという問題ですが、海外ドラマの中にこの問題に対してまったく正反対のアプローチを行った作品があります。

一つは「MADMEN マッドメン」です。

1960年代のニューヨークの広告業界を描いたテレビドラマです。
この作品、とにかく登場人物たちが男女問わずタバコを吸いまくります。仕事場でもプカプカ。会議中もみんなでプカプカ。飲みに行ってはプカプカ。
なにしろ第一話の題名が「煙が目にしみる(Smoke Gets in Your Eyes)」ですしね。
とにかくリアルに1960年代のアメリカを描画するのが作品のテーマらしく、喫煙のみならず、その当時行われていた女性蔑視や日常的なセクハラ、人種差別などが赤裸々に描かれます。ドラマの中に登場する企業名も実在のものをバンバン使ってます。
可能な限り正確に当時の様子を描くことを選択した作品です。

別のアプローチで作られたドラマが「PAN AM/パンナム」です。

こちらは「マッドメン」と同じく1960年代のアメリカを舞台に、パンアメリカン航空のスチュワーデスとパイロットを描いたドラマです。
当時はまだキャビンアテンダントではなくスチュワーデスだったんですね。
マッドメンと同じ時代を舞台にしているのですが、こちらにはほとんど喫煙シーンが出てきません。
航空機内も当時は喫煙できるような時代だったはずなんですが、お客さんでも喫煙している描画はありません。
また人種差別においても多少あるものの、あまり深いところまでは描かれません。
まぁ、もともとポップな感じがウリのドラマなので、そんなにシリアスなテーマを持ち込むのも難しいのでしょう。
三丁目の夕日みたいなもんですね。
また、「マッドメン」がケーブルテレビでの放映だったのに対して、「パンナム」は民放での放映なのでわりと放送コードが厳しめだったらしです。
その辺の事情は以下を。

60年代が舞台の新ドラマ「パンナム」 喫煙と人種問題は正直に描けず

で、まったく違うアプローチをとった2作品なわけですが、どっちが正しいのか?っては難しいですね。作品のカラーにもよりますし。

ただ、マッドメンのように当時の姿をありのまま描く作品は必要だと思います。綺麗な部分にだけ光を当てて、あとはまるでなかったかのように描いてしまうってのも悪くはないんですが、そんな作品ばかりになると違う意味で勘違いする人が出てくるんじゃないかと。
三丁目の夕日観て、あれが当時の日本の姿だと思いこんじゃう人結構いそうですし。
そうなってくると、描かないことの悪影響というものも無視できない問題なのではないかと思います。

とりあえず、2作品とも面白いのでお勧めです。

【余談】
「風立ちぬ」みてきました。
わりと面白かったです。
オタクで”だめんず”な主人公と、だめんずうぉ〜か〜なヒロインとの、駄目駄目なんだけど角度によっては美しく見えなくもないラブストーリーって感じが結構好みでした。
画面はやたら綺麗なのに、なんかところどころ退廃的な含みがあってよろしいw
まぁ、清廉潔白な恋愛劇なんて見てても面白くないですしね。

ところで、宮崎監督と煙草と言えば「紅の豚」が公開された当時、映画雑誌の「CUT」でのロングインタビュー記事で記者の「宮崎監督にとってのかっこいい、とは何ですか?」という質問への解答が印象にのこっています。
宮崎監督は以下のように答えています。(ちょっとうろ覚え)

「ポルコは煙草に火をつけて、つけたマッチを川に捨てるんです。かっこいい、なんてのはくだらないことなんです」

こんな感じで答えていました。
「こじらせっぷりが、一周回ってスゲーなー」と嬉しくなったのを覚えてます。